深深の意味深(みしんのいみしん)

浅学非才の輩による四方山批評

『君の名は。』雑感 ~カタワレ時に半身の夢を見るか~

 熱量があった。

 

 『君の名は。

2016年の新海誠である。

 

公開は8月26日。私は28日に近場の劇場へ観に行った。

 

結論からいえば、素晴らしい映画だった。

 

 

映画を観終わってから劇場を出て、こんなにも満足感があったのは、昨年のマッドマックス、ガルパン以来である。……思ったより色んな映画で満足頻度高いな。

 

近年観た映画は、上記作品に加え、ジュラシックワールドピクセル、TED2、そしてシンゴジである。シンゴジは翌週の9月頭に観に行ったので、少し時間が前後する。

 

その中でもっともよかった映画は何か、と言われて、マッドマックスと本作で迷うところである。アニメーション映画ならぶっちぎりだ。それくらい、『君の名は。』は、私にとって衝撃的な作品だった。

 

新海誠の作品は、星を追う子ども以外、全て観ている。

 

ほしのこえ

雲のむこう、約束の場所

秒速5センチメートル

言の葉の庭

 

今作を見て。やはりどうしても意識したのは、「秒速」である。

私もやはり、「秒速5センチメートルに対する、ひとつの回答なのでは?」と感じる部分があった。

 

秒速が、徹底的に「リアル」に徹しきったのに対し、君の名はあらゆる面でファンタジーで、ガバガバで、熱量があった。勢いがあった。

 

主人公の性格も歴代の彼らに比べて前向きで、行動的で、熱いように思えた。

いや、決してこれまでの彼らが前向きでなかったとは言わないけれど、今作の瀧は「正当派」の主人公だと思った。

物語も「王道」。なんたって、お姫様を救いに行く騎士の物語である。おまけにハッピーエンド。これが王道でなくて何か。

 

やっぱり、起こってしまった悲劇を、過去を変えたいんだよな。

それで、幸せな結末が見たいんだよな。

 

誰だってそうだ。

だから、この映画は良いんだ。

 

設定はガバガバかもしれないし、展開に必然性はないかもしれないし、物語に妥当感はないかもしれない。

別に誰も成長しないし、栄光を掴むわけでもない。

 

でも、皆救われて、王子様はシンデレラを見つけ出す。

 

オマケに、映像美は誰も文句のつけようがない、新海誠作品だ。

 

私は、この映画が、良いと思った。

 

衝撃と、疾走感と、最高の結末。

勢いだけでお話の拙い部分を全部どうでもいい気分にさせてくれる、この作品が、とても良いと思った。

 

こまっしゃくれた批判は小賢しいオタクに任せるとして。

私は、正しく娯楽たるべき娯楽作品に対して賛辞を惜しまない。

いいぞもっとやれ。

 

ただ、次はまた胸を締め付けられるような、苦しいやつを作ってきそうな気がしないでもない。

 

 

……というか、胸は今作でもめちゃくちゃ苦しくなった。

正直、めっちゃつらい。

 

あんな青春が欲しかったよな…………

 

今の私が覚えてないだけで、私にも誰か人生のヒロインがいないものか。いないか。そうか。

 

ただ、よくよく考えてみれば。

秒5のケースって、世の中に溢れかえってるはずなんだよな。

 

「中高の頃イイ感じだったけどヘタれた結果イイ感じ以上にはならなかった」思い出って、ないですかね。私はあります。

で、今に至る。

 

ハイそれ秒5ォーーーー!!!!

 

今たぶんその娘、私のこと「あの頃の記憶」として憶えてるけど今他人の物ォーーーー!!!!

 

でもなぜだろう。全然苦しくない。

絵が綺麗じゃないからかな。

HDなんてメじゃねえ無限画素を錐体細胞で捉えてるはずなんだけどな。

絵が綺麗じゃないのは眼と心が腐りきってるからですか。そうですか。

 

いやあ、相手が好意持ってくれてるか確証が持てないとさ、どうしても進めない時期ってあったよな。

あと、最高にカッコツケだった過去の私、恨むぞ。

クール気取って「別にいいか」思ってんじゃねえよ別によくねえ。もったいないオバケが一個師団で出るぞ。

 

 

しかし、瀧の肉体に入った三葉は、ご神体ゾーンから出るとき、何を代償に支払ったのだろう。

あと、厳密にいえば、カタワレ時とはいえ、ご神体ゾーンの外縁部なのである。なぜ時間を超えた邂逅は起きたのだろう。組紐効果が、同じ場所というファクターで作用したということか。そうか。

 

組紐を返却したあと、リンクが途切れて元に戻るという構成には素直に感動した。

ただ瀧がオールマイティに八面六臂の大活躍をしてハッピーンド、ではないのだ。

種を蒔き、土台を作り、「さあ、俺はここまでやった。残りはお前だ」というバトンタッチが非常にアツい。燃える展開である。

 

ケチをつけようと思えば、つけられないわけではない。

 

時間差についてはわかるだろって話がある。

さすがにどっちか気付けよと。

 

携帯から日記ログが消えていくシーン、確かに観衆はあそこで衝撃を受けるだろうけれど、携帯にそんな機能はない。過去の影響で消えてるなら、元から消えているべき。文字が化けてその場で消えるのはどうなのかなと。

 

女の子だけめっちゃヒロインさせられてるんだよな。

なんつうか、ラノベ的。

設定を盛りに盛って、こうあれかしと舞台上を動かすためだけに生み出されたようなキャラクター、そしてストーリーなのである。

いや、一寸たがわずその通りかせやな。

無粋だった。

 

いやーしかし。よかった。

1800円投げるに足る映画だった。よかったぜ。

 

感想をリアルで言い合える人間が、野郎だけじゃなかったらもっとよかった。